花粉症の原因
花粉症とは、植物の花粉が原因で起こるアレルギー性の病気です。したがって花粉の飛ぶ季節にだけ、その症状が現れます。
日本におけるスギ林の面積は、全国の森林の1 8%、国土の1 2%を占めています。このため花粉症の患者さんの約7 0%はスギ花粉が原因です。スギをはじめとする、風によって花粉を運ぶ植物(風媒花)は、虫などが花粉を運ぶ植物(虫媒花)よりも多量の花粉をつくり、花粉が遠くまで運ばれるので、花粉症の原因になりやすいと考えられています。
花粉症が起こるしくみ
人体にとって異物であるスギ花粉が体内にはいると、まず異物を認識するマクロファージという細胞と出会います。このマクロファージが得た異物に対する情報が、リンパ球のT細胞に送られます。
このマクロファージには、H L Aという異物排除を選択する因子があり、たとえばスギ花粉を異物ととらえる因子がある場合に、T細胞と花粉抗原が結びつき、抗体を作るほうに傾くわけです。
T細胞が花粉抗原の情報を、同じリンパ球のB細胞へ送り、花粉抗原と反応するI g E抗体が作られます。この一連の流れで作られたI g E抗体と抗原が反応することにより、体にとっては有害な状態が生じます。これが
アレルギー反応です。
スギ花粉症は、このように異物である花粉から体を守ろうとするため、くしゃみで吹き飛ばす、鼻水で洗い流す、鼻づまりを起こして、はいれなくするなどの防御をします。そのために、そのような症状が起こってしまうのです。眼の症状である、かゆみ、流涙も同様です。
子どもたちのアレルギー性鼻炎の現状
花粉症発症の要因として遺伝の影響が以前から指摘されており、アレルギー家族歴がある場合は、子どものアレルギー疾患発症に大きく影響し、特に母系からの影響が強いと考えられていましたが、最近の研究では、お父さん・お母さんでほぼ同様の影響を子どもに与えることが分かりました。
花粉症は、以前では学童期以降に発症する傾向でしたが、最近では低年齢での発症が一層進んでいます。現在、小児の花粉症は就学前で4 . 5 %、小学校低学年で1 0 . 2 %、高学年で1 2 . 1 %、中学生では1 5 . 1 %ものスギ花粉症のお子さんがいることが、全国調査で分かりました。
調査では、子どもは成人ほど生活の質Quality of Life(Q O L)が障害されませんが、Q O Lが悪化していない子どもは、花粉症に対して放置される傾向にあり、無防備なままで抗原防御をしないために、特異的I g Eが徐々に増加します。このため成人でのQOL悪化につながると考えられます。
また、花粉症の悪化は喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の悪化も引き起こすため、注意が必要です。
子どもの花粉症 最新の治療
花粉症の治療は、他の鼻や眼のアレルギーの治療と基本的には同じですが、急激に花粉にさらされたために起こる、急性の強い症状への配慮も必要となります。治療法を大きく分けると、症状を軽減する対症療法と、根本的に治す根治療法の二つがあります。
薬物療法で最も多く使用される抗ヒスタミン薬は、鼻粘膜のヒスタミン受容体に結合して、アレルギー反応が起っても症状が出ないようにします。抗ヒスタミン薬は、多かれ少なかれ眠気が出ることがあります。
小児では比較的眠気が出ないことがありますが、学業成績が悪化するなどの報告も見られ、現在の考え方では、やはり第2世代の副作用の少ない薬剤の処方が望まれます。
また使用法では、症状の具合を見ながらの数日間の連続投与でも大丈夫ですが、症状が非常に悪化する症例では、花粉飛散季節中の連続的な薬剤使用が望まれます。上に紹介した治療法を上手に使い分ければ約7~8割の花粉症患者さんが副作用もなく、症状がほとんど出現せず、花粉飛散季節を過ごせることが分かっています。
対症療法:点眼・点鼻薬などによる局所療法。内服薬などによる全身療法。
根治療法:要因抗原(花粉など)の除去と回避。減感作療法(抗原特異的免疫療法)。
正しい予防法とケアの指導
養護教諭や学校の先生方には、正しい花粉症の知識と花粉の予防法の実際を知っていただく必要があります。花粉症はアレルギー反応であり、抗原が目や鼻に入らなければ発症もせず、重症化もしないことを理解してください。また薬剤で症状が止まっていても、抗原は入ってきており、抗体の持続的な産生増加があります。薬剤で見かけ上の症状がなくなっているだけですから、花粉飛散の多いときには、できればマスクや眼鏡の使用をすすめる方が、子どもの将来において症状が重症化するのを防ぐことができます。
抗原の回避には、ガイドラインにもある以下の注意点に気をつけましょう。
花粉の回避は
- 花粉情報に気をつける。
- 飛散の多い日は外出を控える。窓、戸を閉めておく。
- マスク、眼鏡を使う。
- 体育などの屋外の活動から帰ったら、洗顔・うがいをし、鼻をかむように生徒に指導する。
こういった予防習慣が、花粉症には重要です。また、いつ発症するか、わからないのが花粉症です。自分は花粉症ではないからといって安心せず、花粉はなるべく体につけない工夫をするのが賢明です。